長沢 樹『月夜に溺れる』

月夜に溺れる

月夜に溺れる

バツ2でそれぞれの夫との間に子供がいて、現在は2番目の夫の子供をシングルマザーとして育てながら神奈川県警生活安全課のエースとしてバリバリ事件を捜査し解決に導く女刑事が主人公。夫の後輩との間に子供が出来てしまったことで離婚→子供の父親と再婚→さらに離婚というバツ2の経緯も経緯なら、独身の現在は惚れた男が立て続けに事件関係者だったりと、帯に堂々と「多情」と書くだけあってまぁ・・・ビッチですわ。小説の中とはいえそんな“女”が警察社会の中で生きていける(生きることを許される)わけねーだろとしか思えませんが、そこはほら、『神奈川県警』ですから。神奈川県警ってだけで大抵のことは受け入れられる(笑)。
二人の元夫はそれぞれタイプ違いの“イイ男”で、主人公とは円満離婚で子供のことを含め友好な関係を保ち先輩後輩である夫同士の関係も良好だし、遊軍としてあちこちの現場で便利に使われているとは言え捜査実績があるからか行く先々で酷いイジメのような扱いを受けるなんてこともなく、なにより刑事とシングルマザーという“激務”をこなしながらもエステに行き美顔や美肌への気配りも怠らないとか全女性警察官から敵意どころか殺意を抱かれてるに違いないけど、そういう描写は一切なし。とにかくとことん美人で有能でモテる「女刑事」が事件をビシバシ解決する小説ですが、この「事件」が結構面白いんだよなぁ。いくつかの事件が連作として描かれるのですが、どれも時代感が織り込まれていて結構凝ってる。事件の構図(主人公とイイ男との関係性)も連作として考えられた構成になってるし、だから単なるキャラ小説ではなくちゃんと警察(刑事)モノとして楽しめました。