誉田 哲也『ボーダレス』

ボーダレス

ボーダレス

いくつかの話が平行して描かれていて、それらは「〇〇の章」として明確に区切られているわけではなく話の切り替わりはそれこそ「ボーダレス」で、小説ですから当然それらはどこかで一つに繋がるのだろうと予想しその“点”を探しながら読み進めるわけですが、これかな?と思ったものは勘違いだった・・・というより考えすぎで、ただ同じ時間軸のなかで描かれる「それぞれの話」でしかなくって、その「それぞれの話」は高校生の話だったり家族の話だったり愛の話だったり拷問&逃亡話だったりと全然違って、そこにはそれぞれの主人公がいて、それなのにそれらがあっという間に交差するのです。そこには運命とかそんな大層なものはなく、それぞれの物語の進んだ先にたまたまそういう瞬間があった、というだけで、それを巡り合わせというだろう。見事なめぐり逢いっぷりでした。
で、この作品の素敵なところはそこで終わらないところ。むしろそのあとが最高にイイ。交差点を過ぎてもそれぞれの物語は、人生は、ずっとずっと続いてて、巡り合った縁もちゃんと繋がっていて、それらを一番「普通」であった女子高生の視点で描くところ、これがイイ。すごくイイ。何がイイって、交番での取材がここに繋がってたのかってこと。何気ない場面、そのあとにある展開のための行動ってだけだと思っていたことがこういう形で結実すると、なんだかうれしくなるもんね。
帯文から予想されるものとは真逆と言っていい後味に若干の裏切られた感はありますが、それすらもしてやられた!でとにかく面白かったー!。