『昭和元禄落語心中』第5話

平田満の七代目八雲、よかったわー。わずかな時間ではあったものの落語シーンは引き込まれた(でもこれ、見て聞いてるぶんにはすごくわかりやすかったけど「名人芸」としては身体を使って演じ分けしすぎなんだろうなーとは思う)し、最期にみせた助六(初太郎)どころか菊比古にだって八雲の名を譲りたくないという矮小さ、そこにある人間味がとてもよくって、だからこそ『八雲』という名前の重さが伝わってきた。ゆえに八雲は菊比古に継がせると言われた助六の絶望もわかる。それこそアニメ版よりも。
二人で暮らしてたアパートの入り口で膝を抱えて菊比古を待ち、ぼんへの嫉妬を爆発させ、そして四国まで会いに来てくれた菊比古に縋りつく助六はよかった。菊比古に怒鳴られボロ屋から転がり出てくるときの表情は絶品だった。これまで育三郎の助六にはなんの魅力も感じなかったけど、落ちぶれてからは最高だわ。やはり「ここ」に狙いを定めてたのね!育三郎はやってくれると思ってたわよ!(高速手のひら返し)。
やっぱ助六と菊比古の物語なんだよね。と、菊比古に抱き着く助六と臭いといいつつそれを受け止める菊比古に、女(みよ吉)は刺身のツマでしかないんだなとまざまざと思い知らされる。
身体は女を求めようが、女に溺れようが、菊比古の魂は助六だけを求めるし、助六もまたそうなのだと。
それをわかっていながら、わかっているから、どうにもならなくてもどうにかしてやりたいみよ吉の気持ちはわかるけど、菊さんちから出てくる助六を傘さして待ってるのとか、菊さんの手に渡ると計算してハガキを出す狡猾さがやっぱり嫌いだ。