- 作者: 稲羽白菟
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2018/06/21
- メディア: 単行本
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馴染みのない、特殊な、と書きましたが、三分の一ぐらいが文楽に纏わる話、薀蓄だったりするので、全く興味がないとその時点で厳しいかなーと言わざるを得ませんが、幸いにして私は興味だけは人一倍あるんでそのあたりもとても楽しく読めました。
四十四年前の事件の真相は文楽とは直接関係のない、どこにでもある愛憎によるものではありましたが、事件の鍵を握る人物に文楽の「役」を投影させることで最後まで「文楽ミステリ」として描き切ったところに感心しきり。それと、ワトソン役なんだとばかり思っていた人物が物語の途中で怪我で退場(島外の病院送り)し、じゃあこっちがワトソンになるのかと思った人物は最後まで「傍観者」の立場であったこと、この変則構成が物語の流れを止めることなく成立してたところも面白かった。