周木 律『あしたの官僚』

あしたの官僚

あしたの官僚

  • 作者:周木 律
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


厚生労働省のキャリア係長が主人公で、いくつものポストを兼任し慢性的な疲弊状態の中、新潟県のとある市で謎の病気が広まり、その原因究明・対応を一人で行う羽目になる。
という物語で、帯にはデカデカと「忖度一切なし。これが、官僚たちのリアルだ」と書かれる新時代のポリティカルフィクションです(これも帯に書かれているのですが、そんなジャンルがあることをはじめて知りました)。

まず思ったことは、周木さんってこういうのも書く人なんだ、ということでした。
私のなかで周木さんと言えば「堂シリーズ」でして、つまり“めんどうくさいミステリを書く人”だもんで(褒めてます!)、こういう「働く男の物語」も書くのか!という驚きがありました。

で、その驚きが去ると、1年経っても状況が好転していない、なんなら悪化してる「現実」を思い絶望するしかなかったよね・・・。
様々な対策にあたってる人たちはこの物語の主人公のように大変な激務の日々を生きているのでしょうが、庶民としては「なにも変わってない(まともな成果が出てない)」としか思えないわけで、物語の中の人物たちが熱ければ熱いほど私の気持ちは醒めていくわけですよ。読み物として面白く読んだけど(最後の最後でファンタジーになるのかよ!?と思いっきり釣られたのは私です)、この気持ちはどうしようもない。