中村 文則『その先の道に消える』

その先の道に消える

その先の道に消える

タイトルが印字されたページをめくるとそこに書かれていたのは『すべての虚無に。』という言葉。

ああ、なんて素敵なのだろう。これからどんな物語が読めるのだろう。読み始めるのが楽しみすぎて、その日はその言葉をかみ締めるだけで本を閉じました。翌日むさぼるように一気読みしたんですけどね。

殺人事件が発生し、主人公と思われる刑事が特別な感情を抱く女が事件にかかわっている、もっと言えば犯人であることが(刑事にとっては)明白で刑事は証拠をでっち上げ女を容疑の圏外に置こうとする・・・話ではありそうなものの、でもそれがメインストーリーではなさそうで、この物語はどこへ向かっているのだろう?いったい何を描いているのだろうか?と思いながら読み進めましたが、読み終わって残ったものはまさに虚無。最後の一文がタイトルに繋がった瞬間、そこに見えたのは虚無だった。