神奈川で起訴された傷害事件の犯人が警視庁が捜査してる重大事件の犯人と目されていて(読者目線ではそれは明らかで)、だから神奈川の事件はアリバイ作りのためにでっち上げられたものだと法廷関係者はみんな「わかってる」んだけど起訴したという“事実”を取り下げることはできず、事情がマスコミに漏れて世間が騒ぐ中主人公が「無実にしてみせる」と宣言し、傷害事件の加害者も被害者も目撃者も全員起訴事実を認めている鉄板案件をひっくり返すことができるのか?という法廷ものとしては変化球ですが、この「ストーリー」がとにかく面白かった!。メインとなる事件と並行して主人公が抱える案件がもうひとつあって、両者が繋がるところとかもうワクワクしかなかったです。
父親(この設定、役どころもまた良し!)のアドバイスを受け主人公自身が導き出した「策」は結構なトンデモで、法廷に立つものとしてこれが許されるのか?と、普通ならそうなるところなんだけど、そもそもが「嘘」であるわけで、裁判に関わる法廷関係者たち全員の「意思」として、これは見事な展開。
裏社会のプロたちに対しこんなことをしでかした主人公が心配になる点についてもちゃんとフォローがされてるし、後味スッキリで気分良く読み終えました。
木内 一裕『小麦の法廷』
タイトルの「小麦」とは新米弁護士である主人公の名前で、国選弁護人として比較的楽な案件を選んだはずがそれは三人を殺害した大事件の犯人のアリバイ作りとして偽装された事件であった。というところから始まる物語です。