『歌舞伎夜話 ―坂東巳之助―』@歌舞伎座ギャラリー

誰もが気軽に何の責任も自覚も持たず発信できてしまう現代の情報社会に対し、防御本能というか、もはや拒否反応と言っていいのではないかと思うほどの言動を見せる巳之助さんなので、こうやって文章として残すのは巳之助さんの本意ではないだろうなとは思うのですが、でもこれは歌舞伎のみならず演劇というものを観て、それに対し(ツイッターなりブログなりに)感想を書く者にとってとても為になる話だったので、わたしのエゴで書き残しておこうと思います。
注:これは巳之助さんのお話をわたしなりに解釈したものですので、これがそのまんま巳之助さんのお考え(仰ったこと)というわけではないことをご理解ください。


まず巳之助さんは「連獅子」という作品を例えに出してお話されました。
巳之助さんは「連獅子」を演じるにあたり、親と子の毛振りが揃っている必要はない、と教えられたそうです。親はゆったりと、子はぶんぶん回してもいと教わったと。でも今はみなさん毛振りを揃えるし、客もそれを喜ぶ。それはそれでいいんだけど、でもだからといって毛振りが揃ってないことがイコール良くない、悪い、下手だ、ということではないのだと。
それから「仮名手本忠臣蔵」の五段目に登場する定九郎という人物の“さがり”(前部が垂れてるふんどし)に血糊をつけてはならないという口伝について、この口伝自体は知ってる人が多くてもそれが「なぜ」そう伝わっているかまで知ってる人がいるか?と問い、それはただ「衣装さんに申し訳ないから」だと教えてくださいました。白い布に赤い血糊をつけてしまうとそれを綺麗にするのが大変だから、という意味での「衣装さんに申し訳ない」ということだと理解しましたが、それは衣装さんという“裏方”に対してのことでありお客さんにとってはそんなことは全く関係がない。汚してしまって申し訳ないってのは楽屋裏でやればいいことであって、白い布に血がついたってお客さんに対してはひとつも申し訳なくなんてないんだと。
実際ふんどしを汚さず血糊を膝に垂らそうとするから不自然な体勢になるわけで、これもまた三津五郎さんに言われたお話だそうですが、(三津五郎さんは定九郎を演じたことはないけど)演じるとすれば自前で25枚ふんどしを用意して毎回汚せばいいんだと、汚したっていいんじゃないかと、そう仰っていたんだそう。どなただったかお名前は失念してしまいましたが、その昔(定九郎ではない役で)実際に自前で全日分着物を用意した役者さんもいらっしゃったそうで、そういう『意味(理由)』まで分かってる人がどれだけいるのかと、そんなことを仰ってました。

それは『批評』と『感想』の線引きが果たしてどれだけできているのだろうか、ということに繋がるんだけど、お名前を出して劇評を書いてらっしゃるプロの批評家の方々はそういう知識があった上で、好き嫌い等の私情・感情は極力省き客観的・俯瞰的な目線で書かれていて、ゆえにそれは「批評」であると。そこでなにか間違いがあったりすれば名前を出しているプロだからこそ連絡を取りそれはこれこれこうなんですよと説明することができると(三津五郎さんがそうしているのを見たことがあるそう)。

巳之助さんがお話されたのはここまでで、ここから先はわたしの解釈ですが、それに対して客(ファン)がツイッターやブログに書く「感想」はそうではないんですよね。毛振りが揃ってないから「ダメだった」だの定九郎の見せ場が「形が悪かった」だの深く考えずに書いてしまう。そしてそれが広まってしまう。毛振りは揃ってなければならないという認識になってしまう。それに対して役者はどうすることもできないんだと。
でもそれはもうどうしようもないんだよね。時代が変わってしまったということだから。
だから巳之助さんは自分の発言には注意しなければならないと思ってるし、それでも失言しちゃうことはあるし(そしたらそれが広まってしまうかもしれないから)、だからなるべく多くは語らないようにしてる(したい)、というお考えだそうですが、巳之助さんが一番言いたかったことはつまりお前らもっと自覚と判断力を持てってことではなかろうか。

客だもん、ただのファンだもん、そこに好き嫌いはあって当然ですよ。毛振りが揃ってなかったとして、知識量もあるけどそんなことよりもそれが贔屓の役者だった場合とそうではない場合ではきっと違った評価になる。それが「感想」なんですよね。だからそれを“正しい”と思い込み鵜呑みにしてはいけないし、それをそういうものとして安易にRTしたりするのもよくねーよと、そういうことだろうし、書く方も己の観方が浅い(かもしれない)自覚をもうちょい持てよと、なんならもうちょい勉強せーよと、そういうことだとわたしは受け止めました。

そしてこれは歌舞伎に限ったことじゃないよなーと。歌舞伎は決まり事がたくさんあるし、それはただ観てるだけじゃわからなかったりするものも多いから特にその側面が強いけど、観るもの・観たことに対し理解するための努力はすべきだよなーと。例え自己満足のためのブログであっても自分の解釈・判断・評価、自分の書いたものにについて自覚と責任を持たなければならないと、巳之助さんのお話を聞きながらそんなことを考えました。
・・・まぁみっくんの口調と態度相変わらずでしたけどねー(笑)。
もうさー、ちゃんとすればちゃんとできるのになんでそう斜に構えるというか悪ぶるというか、そういう感じにするかなあ!?ってグギグギするんだよー!。
・・・・・・でもそこが好きなの。そんなみっくんが好きなんです。

てかたぶんどこかで写真がアップされると思うからそれを見て欲しいんだけど、モヒカンお団子ヘアでさー!それなのに格好はグレーのシャツに黒のセーターだかベストの上に細身の黒ジャケットでキャメルのチノパンに白いスニーカーという完璧坊ちゃんスタイルで、どんだけチグハグなんだよと!。
でもそのチグハグさがわたしの思う坂東巳之助さんそのもので、ゆえに好き!そんなみっさま大好き!!って思ってしまうわたしのような馬鹿女への苦言が↑なのでしょう・・・・・・わかってる・・・わかってるんだよ・・・・・・。

あ、そうそう。馬鹿で思い出したんだけど、来年の浅草で棒しばりを演るという話のなかで昨年の納涼について語られたのですが、えーっと、舞台上(巳之助さんとしては)はべろんべろんに酔っぱらって踊るってな話だけあって楽しく演じてるのに客席がしんみりモードでその温度差が違和感すぎた・・・・・・・・・そうです。「まぁああいう(「十世坂東三津五郎に捧ぐ」)のがついてましたし気持ちは分かりますけどね!」とは言うものの、でも客席の湿っぽさが違和感だったそうです。
・・・・・・ええ、わたしボロ泣きしました\(^o^)/ 勝手に巳之助さんにいろんなもの乗っけて勝手に盛りあがってボロ泣きしましたわ\(^o^)/
これもまた巳之助さんが仰っていたんだけど、「先月の演目についてどんな気持ちでやってたんですか?」と聞かれるのはまだわからなくもないけど「来月の演目についてどんな気持ちで演じるつもりですか?」と聞かれることが理解できないと。自分が観たものに対しあれはどういうことだったのかという“答え合わせ”がしたい気持ちはわかるし答えられるものには答えたいけど、これからやるもの(観るもの)に対しここはこんな気持ちで演じると知ってどうするのかと、知ってしまったらそうとしか見えなくなるかもしれないし、そう見ようとしてしまうかもしれないじゃないかと。それはよくないと思う、というニュアンスのことを仰っていて、そこから
「「この場面はどんな気持ちでしょーか!」というクイズをやったりしてね(笑)」
「「嬉しい」「悲しい」の二択で(笑)」
「それはさすがにわからなかったらマズイ(笑)。それは間違えた(回答者)ほうがおかしいのか、演じる側の演技力がおかしいのかって話になる(笑)」
ってな会話があったんだけど、だから去年の納涼で巳之助さんも、それからきっと勘九郎さんも演じていて『楽しい』し、演目も楽しくて面白いものなのに客席がみんな涙ぐんでるもんだから「おまえらおかしいぞ!」ってな感じだったんだろうなーと。でもこれについてはわたし折れない!。みっさまがなんと言おうがファンとしてあの空間あの演目は泣いてまうって!!。

あとどうしても書き残しておきたいことが二つ。
まずは歌舞伎以外の活動について(司会の戸部さんはしきりに「例えばミュージカルとか」を連発してましたが)やる気はあるのかと聞かれた巳之助さんは「歌舞伎のために歌舞伎以外の仕事をしようとは思わない」けど「タイミングがあえば考える(やる気がなくはない)」と。歌舞伎界の発展の為に歌舞伎以外の仕事をしようとは思わないし、できることなら歌舞伎だけやっていたい、昔の役者たちはみんな歌舞伎しかやってなかったわけで、それでも名を残してるわけだから、できることならそれが理想だと仰ってました。

まぁさすがにわたしも巳之助さんにミュージカルに出て欲しいとは思わないけどw、でも具体的にこの作品ってのはないんだけどストプレで苦悩する青年役とか観てみたいという欲望はあるんだけどなー。ストプレだったら喜劇よりも悲劇で観たい。
それから、バンド話になって元々はドラムを一番初めにやり始めて(楽譜読めないから。ドラムなら音階ないから耳コピでできるから)、今でも電子ドラムを叩くことはあるという発言から戸部さんが「次はここで(夜話で)披露するとか(笑)」とか言いだして、
巳「(ヘッドフォン着けて)コレで叩くから(客に)音聞こえないじゃないですか!」
戸「それをみんなで見ると(笑)」
巳「なんでそんな辱めを受けなきゃなんないんだよ!」
戸「じゃあエアギターとか・・・?」
巳「エアギターと言えば・・・滝沢さんですよ」
戸「??」
巳「ドラマの」
戸「ああ、せいせいするやつ」
巳「せいせいするほどエアギター」
戸「見てたんですか?」
巳「見てない。エアギターのとこだけ見てた」
戸「滝沢さんとやるんだったらやっぱり演舞場ですよね。滝沢さんの後ろで覆面で叩いたらどうですか?千秋楽の時に実は巳之助さんでした!ってバラす」
巳「やだよ!絶対最後まで(正体を)隠してさっさと逃げる」
ってなアホ会話がありました(笑)。「せいせいするほどエアギター」て(笑)。