『三月大歌舞伎』@歌舞伎座

今回はわたし泣かなかったー!。
わたしは坂東巳之助さんに余計なものを過剰に乗せてしまうところがありまして、自分のなかでその思い入れを勝手に一方的にぐわーっと高めてしまってブワっと泣いてしまう癖があります。そういうの巳之助さんにとっては不本意だろうし、なんなら超うぜえとか思われてるであろうことは重々承知しているのですが、わかっていてもついつい思い入れてしまうのです。それはもうしゃーない。我が事ながらどうしようもない。だからこそ癖なのである。

そんなわけで客席入り口脇に三津五郎さんの素敵なお写真が飾られる「十世 坂東三津五郎三回忌追善狂言」として家の芸である「神楽諷雲井曲毬」通称どんつくを息子の巳之助さんが踊るときたらもう1000%泣くだろうってなもんでしたが、あにはからんやそういう意味でこみ上げる瞬間は全くなくって、舞台上で陽気に踊る巳之助さんのどんつくを素直に楽しめて、かわいいいいいいいいいいいいいいっ!とじったんばったんしたかったぐらいで(心の中では一緒にどんつくどんつくどんつくどんつく踊ってましたw)、ああ、わたしのなかでもそういう時期は過ぎたのかなーと、そんなことを思いながら、巳之助どんつくの踊りを見るおやじさま以下出演者の皆様の目が厳しくも暖かくて、おやじさまなんて巳之助どんつくに合わせて顔を小さく揺らしてたぐらいで(楽しそうだった)、親方役の松緑さんもザ・兄貴感バリバリ(かつ色気むんむん)で巳之助どんつくを引っ張り引き立てしてくれてて、太鼓打の亀寿さんもにこやかに支えてくれてて、とにかく楽しくて、楽しいしかない三回忌追善狂言でありました。

で、巳之助さんと言えばですね、初役の「義経千本桜 渡海屋・大物浦」の相模五郎がものすっっっっっっっっごい良かったの!!。ニンだろうなとは思ってましたが、滑稽なところと本来の姿(立場)との落差が最高で、開幕2日目にしてもうすでに巳之助さんの相模五郎になってる。凛々しく気高い仁左衛門さんの知盛の下にこの相模五郎と猿弥さんの入江丹蔵がいるというこの図がたまらなくてですね、どんつく目当てってかもうそれしか頭になかったもんで、心の準備が追い付かなくってワタワタしてしまったわw。

どんつくはもちろんのこと、このお役を歌舞伎座の大歌舞伎で務めることが出来ること。巳之助さんにとってすごくすごく励みになるのではないだろうか。
これから十年先二十年先、巳之助さんのどんつくがどう変わっていくのか、どんなどんつくをみせてくれるのか、この先の巳之助さんがほんとうに楽しみ!。