福田 和代『潜航せよ』

潜航せよ (単行本)

潜航せよ (単行本)

となりのキ●ガイ国家が日本海から自国にミサイル撃ち込むクーデターを企て、拉致した航空自衛官をその鍵を握る人物として配置するってな話で、クーデターに巻き込まれる兄と利用される弟と、複雑な過去を持つ拉致された自衛官の目線でそれを描いているのですが、兄弟の関係性や自衛官の設定を含めネタ自体は私の大好物であるはずなのに全く燃えない。だってキャラクターに魅力がないから。
潜水艦側も自衛隊側も結構な人間が出てるのに誰が誰だか区別がつかないというか、一人一人を描いてないんですよね。描きたいのは人間ドラマではなく『政変』そのもの、ということなのでしょうが、私にとってそれは“ありそう”なことではあるもののでもやっぱりリアリティはないんで、キャラ萌えでもなけりゃそういう話を読むのはちょっと辛い。拉致された自衛官と政変の首謀者との関係性とかいくらでも盛れそうだし、潜水艦側も船医や部下がもっとしっかりキャラ付けしてくれたならば潜水艦内の戦いがもっと感情的に楽しめただろうになぁ。
・・・と思いながら読み進めていたわけですが、これどうやらシリーズ物というか前作にあたる作品があるみたいです。作中であたりまえに過去に起こった「F-2事件」が語られ、それがあっての『今』として話が進むことに何の説明もなくて戸惑ったんだけど、そういうことならそうと判るように帯かなんかに明記してほしかったです・・・。
でもそれにしたって、いや、それならなおさらもっとシリーズ主人公(なのであろう)の自衛官を盛って欲しい!。上手くすればジャックバウアーになれそうなのに!。