竹吉 優輔『襲名犯』

襲名犯

襲名犯

第59回江戸川乱歩賞受賞作です。帯に選考委員の桐野夏生さんによる「時折ぎらりと光る描写には感心させられた。」とコメントがあって、桐野さんが「ぎらりと光る」というからには如何ほど!!?と結構期待しながら読んだんですが、そうでもなかった・・・・・・かなぁ。連続猟奇殺人の舞台である架空の街を覆うどこか抑圧されたというか陰鬱というか、そういう空気感は悪くないし、兄の身代わりという主人公の設定(背景)もわりと好みではあったけど、選考委員の方も仰ってる通り警察が無能だから追われる側も追う側も緊迫感・切迫感がないんだよね。トリック(仕掛け)は早々に解ってしまうんであとは真(新)犯人にいつ誰がどんなキッカケ(理由)で気づくのか?という興味のみで読み進めたのに、過程を描かず結果だけ見せられた感じだし。
でもまぁ手垢付きまくりの題材に敢えて挑んだ心意気と将来性(最終候補者の平均年齢が50歳代ってことが一番の驚きだったかも・・・)に賞を与えたということのようなので、次作に期待します。
それはそうとして、京極さんの選評が面白くってこれを読めただけでもこの本を手に取った甲斐がありました(笑)。