藤崎 翔『神様の裏の顔』

神様の裏の顔

神様の裏の顔

第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作です。横溝賞の名前は勿論のこと、有栖川有栖恩田陸黒川博行道尾秀介からなる選考委員が満場一致で受賞を決めたとの帯に全力で惹かれて手にとったわけですが、え?元お笑い芸人ってなにその経歴。巻末の選評で道尾さんが名前と書名をいくつか挙げているようにお笑い芸人が小説を書くこと自体は珍しくありませんが、「元」とついてるってことは今はもう芸人を辞めているってことですよね?。道尾さんが名前を挙げた人たちはまぁ所謂“売れてる人たち”なわけで、その名前だからこそ出版に値するってな面は否めないと思うのね。でもこの人は誰かの覆面ペンネームなどではなくガチなんですよね?。お笑い芸人ってのは単なる経歴ってだけなんですよね?。そんで横溝賞取っちゃうかー。
・・・と考えてしまうぐらいには面白かったです。横溝賞としてはちょっと毛色が違う(気がする)ことも含めて。
中学校の教師をしていた68歳の男性が心不全で亡くなり、その通夜の場で参列者たちがそれぞれ故人に対し想いを馳せるんだけど、誰もが口々に「神様のような人」だった言う故人は確かにそれぞれにとっても神様のような人なんだけど、でもそれぞれの回想の中でだんだんと神様は姿を変えていき・・・ってな話で、そこまでは結構文句なしに「面白い」と言えるもののそこからの展開が陳腐ではありましたが、盗聴→登頂の聞き間違えとか笑いの要素も展開上無理がなく織り込まれていたし(黒川さんが一つ二つ視点を削ったほうがすっきりすると仰ったのはココかなーとは思ったけど)、次もぜひ読みたい。