薬丸 岳『友罪』

友罪

友罪

町工場に同日雇用され友情を育むようになった同じ年の男が、過去に苦しめられ続ける女に救いの言葉をかけてくれやがて愛するようになった男が、かつて14歳で日本中を震撼させた猟奇殺人の犯人だった。
新聞だったかな?どこかで薬丸さんがこの作品を「殺人犯の『その後』を描いた」というようなことを語ってる記事を読んだ記憶があるのですが、殺人を犯した男の内面は直接は描かれてないんですよね。親友と呼ばれる男であり、恋人のような存在である女であり、犯人にとって母親に等しい存在である精神科医であり、殺人犯と関わることになった(なってしまった)人々が自分に対する男の言動やなんかから、男の内面を推測してるに過ぎない。
というよりも、それぞれ男とは関係のない“過去”に現在も縛られ続けていて、話の主題は男との出会いによってそれぞれが過去と向き合うことを決意し、それぞれのやり方でそれを実行する(しようとする)姿にあるのかなーと。そこにかつての猟奇殺人犯が今日まで生き続けた意味があるのかなーと。そんなことを感じました。