牧村 一人『アダマースの饗宴』

アダマースの饗宴

アダマースの饗宴

先日読んだ作品が面白かったので、別の作品もと思い次はこれを手にとってみました。第16回松本清張賞受賞作です。
これまた面白かったー!。帯で日本のハードボイルド小説界の先頭を走ってる大沢在昌氏が「嫌な商売敵になるだろう」と絶賛コメントを送ってますが、これ結構マジだと思う。
先に手に取った作品も女主人公だったけどこれもそうで、わたしがこれまで読んできた中で「女主人公」と「ハードボイルド」をここまで上手く融合させてる人って他にはいないと思うし、その「女主人公」も紛れもなく女でありながらも性別を超えたカッコよさがあるというか、女を取っ払った「主人公」として魅力的なんですよね。だけど「女主人公」である理由がある。女であるからこそ主人公はこう動きこう生きる。これが明確だから気持ちよく読めるのです。この微妙なニュアンスって特に男性には伝わりにくいと思うのですが。そんな単純なことではないけれど例えば同じハードボイルドの女主人公であっても篠原涼子竹内結子ではなく天海祐希。そういう匂いの女主人公で、わたしはすごく好みです。
それに、これまた帯に「ネオ・ハードボイルド」という言葉があるのですが、ネオ・ハードボイルドってなんだよ?とは思うものの、これはまさに『ネオ』だなぁと思う。ハードボイルドってやっぱり様式美じゃないですか。例え時代遅れと言われようが俺は俺のやり方を貫く。それがハードボイルドだと私は思うのですが、それは裏を返せば時代の流れに取り残されることでもあると思うんですよね。扱う仕事や事件の内容や電子機器の扱い方とかそういうことではなく、空気感そのものが明らかに『今』とは違う。それがいいか悪いかは別の話になりますが。
で、牧村さんの作品は『今のハードボイルド』だと思うわけです。それプラス魅力的すぎる女主人公。もちろんそんな女たちが愛する男も当然魅力的。そりゃ強敵だと思うわなーと。