五條 瑛『動物園で逢いましょう』

動物園で逢いましょう

動物園で逢いましょう

だいだいだいだいだーーーーーーーーーい好きな<鉱物シリーズ>の最新刊です。待ちに待ちすぎてもう枯れる寸前でした。嬉しさのあまり1ページ目をめくる手が震えてたといえば私がどれほど渇望していたか分かってもらえるでしょうか。


一番貧乏くじを引いたのはいったい誰か。考えるまでもない。なんとも言えない苦々しさから、葉山は手を伸ばして坂下の口許から煙草を掠め取り、自分の口に運んだ。

『20ドルゲーム』より

「――――高くつくからな」
そう言うと、葉山はテーブルの上に身を乗り出して、坂下の口許から缶ビールを奪った。一口飲んでから、諦めたようなため息をつく。
中略
「その茶色のフォルダーの中に参考資料が入っている。人事が作成した奴の記録だ。それを読んでみろ」
そう言ったかと思うと、坂下は素早い動きで缶ビールを奪い返し、自分の喉に流し込んだ。
中略
書類を置くと、葉山はまたも腰を浮かして、テーブル越しに缶ビールを奪う。すぐに口を付けたが、ほとんどビールは残っていなかった。勝ち誇ったように、坂下がにやりと笑う

「坂下」
葉山は背後から手を伸ばし、坂下の頭に触れた。「いい選択だ。」
「言ってろ、ビーバー」
荒々しく頭を傾け、邪慳に手を払うと坂下はどんどん先へ歩いて行く。

『30ドルウィークエンド』より


葉山×坂下 ハァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン★
はぁああああああああああああ潤うわああああああああああああああああああああああ。1本の缶ビールやら1本の煙草やら奪い合いっこしすぎ><。・・・ってこういう部分だけ抜粋するとどんな本かと思われるでしょうが、米国国防総省の在日情報機関の情報分析官が米軍横須賀基地情報部に所属している上司の命で、基地内NISC(海軍調査軍)の調査員と協力したりしなかったりする本格スパイ連作短編集です。誤解なきよう!
というわけで。ふ〜っときめいたわ〜。本読みながらときめきすぎて発汗することってそうそうないよな。話ははっきり描いてはいないもののとりあえずの決着を想像できるラストではありますが、ちょっと中途半端というか続編へ続く・・・的な感じがするので1冊の本としてはどうかなと思います。でもそもそも帯に堂々と『鉱物シリーズ』と書いてあるしいきなりこれを手に取る人もさほどいないだろうからまぁいいのではないでしょうか。だって葉山がうじうじ考えて悩んで坂下や洪にいじめられJDにいじられ、そしてエディに責められ受け流されてればそれだけでいいんですものっ!!!(暴言)。ていうか葉山の美形っぷりがさらに増したように思うのですが、ついに5歳の幼女から「お兄ちゃん、アニメみたいでかわいいね」とまで言われてるし(笑)。ますますマッチョ坂下と華奢で可憐な葉山たんの図に拍車がかかってとても素晴らしいと思います!。


ちょっと真面目な感想を書きます。ちょうどこの本を読んでたときに日本中が野球一色と化していたわけですが、つくづく日本人って不思議な国民性だよなぁと思いました。野球に限らずサッカーとかハンドボールとかもそうだし、決してその競技そのものが好きなわけではないくせに『JAPAN』となるとこぞって熱狂するってのは何なんだろうと。かと言ってこの本に書かれているような各省庁や国家施設からの情報漏洩やそれこそ自衛隊が海外へ出て行くことにはさほどの関心を持たないわけですよ。こっちの方がよっぽど『JAPAN』を意識すべきことなのに。つまり『愛国心』ゆえの熱狂ではないと思うのです。ほんと何なんだろう、この現象は。
エディや坂下が、軍=アメリカ国家に対して揺るぎなき忠誠心を抱いているのを読むと(フィクションではあるけど実際にこんな感じなんだろう)、日本があらゆる面でアメリカの下僕でいるのも当然だよな・・・。