恒川 光太郎『秋の牢獄』

秋の牢獄

秋の牢獄

同じ日を何度も繰り返す表題作、決まった時間に決まった場所へ移動する家の守り主となった青年の物語、ある特殊な能力を磨けば磨くほど孤独になる少女の物語、3篇が収録された短編集です。
3篇に共通するのは『閉じ込められる』ということ。時間、空間、心、それぞれ形は違えど閉じ込められる物語。最後の1篇はちょっと違うけど、表題作と2作目は日常からほんのちょっと外れただけで非日常の世界に迷い込んでしまう怖さ、薄ら寒さを感じました。そして、考えようによっては(人によっては)非日常の世界のほうが居心地のよさを感じるんじゃないか?という怖さも。最後の1篇は、異能であるが故の孤独、哀しみ、というのは想像するしかないけれど、人は他人と何かを共有できなければ生きていくのは辛いんだよなぁ・・・なんて思った。
相変わらず硬質な文章で、今の季節にはピッタリな本だと思います。