長岡 弘樹『傍聞き』

傍聞き (双葉文庫)

傍聞き (双葉文庫)

絶賛と言っていいほどの書評に惹かれて手に取ってみました。初めての作家さんになります。
第61回日本推理作家協会賞短編部門受賞作であり、2012年おすすめ文庫王国国内ミステリー部門ダントツ1位とのことですが、『なるほど。納得です』の一言。
これは確かに上手いわ。表題作を含め4編からなる短編集なのですが、それぞれ更正施設の施設長、消防士、刑事、救急救命士が主役なので“仕事を通じて人と関わる主人公”という共通点はあるものの性別も年齢も異なる人物たちによる物語は一切繋がりがなく、雰囲気も全く異なるのですが、とにかく上手い。いや、巧いと書くべきか。
それぞれの物語には謎が用意されていて、もちろんそれに対して主人公達がぶつかり答えを見つけるわけですが、どれも日常業務の延長にある謎であり長い人生の“1エピソード”として描かれているのでそういう意味での派手さみたいなものはないです。おおまかな話の展開は読めるんだけど、でも面白いの。作中でそれぞれ鍵となるアイテムがあるのですが、その出し方・見せ方のセンスが良くて、それが何を意味していたのか明らかになるラストはそうきたかー!と思わず膝を打つ感じ。そして1作1作読み進めていく中で1冊の本としての上げっぷりがすごい。「傍聞き」と「迷走」は全く予想できなかったもん。読んでよかった!と心から言える大満足の作品でした。