恒川さんの描く「闇」はなぜにこうまで美しいのだろうか。
その先は底知れぬ闇だとわかっているのに、その扉を開けたくなってしまう。
開けてしまったら呑み込まれてしまうこともわかっているのに、足を踏み入れたくなってしまう。
5篇からなる短編集ですが、この作品集に「真夜中のたずねびと」というタイトルがつけられているところが素敵。
始まりの1篇はまだ仄暗い感じだけど、1篇読み終わるごとにだんだんと、どんどんと昏くなり、闇が濃くなり、いつのまにか辺りは真っ暗闇で、そこになにかが訪れる怖さ、それはすぐそこにいる怖さがこのタイトルからじわじわと滲んでくる。