石崎 幸二『首鳴き鬼の島』

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

切り落とされた鬼の首が夜な夜な鳴いて身体を呼び、呼ばれた身体は今もなお首を求めて彷徨っているという「首鳴き鬼」の伝説。若者向け雑誌編集者・稲口とその女友達・茜は、怪奇スポット特集の取材で、伝説の舞台とウワサされる相模湾に浮かぶ大手会社の私有地・頸木島を訪ねることを許されたが、折りしも頸木島のオーナー一族の間では後継者問題で不穏な空気が漂っており、その夜、首鳴き鬼の伝説に見立てた連続殺人事件が発生する。

孤島、資産家一族、嵐、破壊された通信機器、見立て殺人･･･いくつになってもときめく設定だなぁ。
内容に触れずに感想をかくことは多分不可能だと思うわけですが、今という時代ならではのネタをさらに一歩踏み込んだところでよくもまぁこんなにこねくりまわしたなーというトリックは、読んでる間は無駄なんじゃ･･･と思ったほどのバカ丁寧な説明のおかげで至極納得できるものでした。でもトリックとか舞台装置なんかのバリバリの本格要素よりも、女コエー！女って恐ろしい！！って印象のほうが強く残ったんだけど･･･。
この人に限らず、素敵な本格モノを書いてくれる作家さんは総じて人物描写が下手というか、トリック8：人間2（かなり多めに見積もって･･･）ぐらいの力の入れ具合だと思ってるのですが、この物語は特にそれが顕著だなと。まず殺された人間達がほぼ区別つきません。すごい言い方しちゃえば雑魚だからいいっちゃいいんだけど、そのせいでなんというか、館の中に緊迫感が全くないんだよな。実際人が殺されたってのに「隣で飲んでるから」とか普通に言ってるし。明らかに不安を紛らわすための飲酒ではなく普段どおりの飲酒のノリなんだもん（笑）。だからといって人を人とも思わない傲慢な人ってわけでもないんだよなぁ、わけわからん（笑）。スプリンクラーの仕掛けはその場景を想像するとかなりテンション上がったわけですが、ここでもっと阿鼻叫喚っぷりを書いてくれよー！。主人公（稲口が主人公でいいんですよね？）だけはかろうじてナイスキャラというか、ノリノリで自説披露した後の転落っぷりが悲惨すぎて面白かったので救われたけど。