北川 歩美『運命の鎖』

運命の鎖 the geneticfuture (創元クライム・クラブ)

運命の鎖 the geneticfuture (創元クライム・クラブ)

中年になると発症し死に至る遺伝病「アキヤ・ヨーク病」。両親のどちらかが発症した場合、その子に遺伝する確立は2分の1である。理論物理学者の志方は、生物学上の父親がアキヤ・ヨーク病を発症したことを知り、病気への恐怖から失踪した。優秀な遺伝子を残す目的で設立された精子バンクに自らの精子を預けたままで・・・。それから20数年。志方が残した精子から生まれた子供達はそれぞれ受験や結婚、出産など人生の岐路に立っていた。はたして彼らにアキヤ・ヨーク病は受け継がれているのか。そして彼らが選んだ道とは。


なんだこの耳慣れないけど恐ろしい病気は・・・と思ったらこの病気は現実にあるものではないそうです。親が発症したら子供も同じ病気になる確率が五分五分、しかも不治の病・・・それだけでもかなりヘヴィーなシチュエーションなのに、加えて自分の父親は精子バンクで買われた精子である・・・うわー考えたくないわ。
“サイエンスミステリ”とありますが、この著者にしてはむしろサイエンス度は低めです。そんなヘヴィーな人生を歩かざるを得ない志方の子供達が、その事実を知った上でそれぞれが直面してる現実にどう向かうのかという人間ドラマを、科学的なスパイスで味付けしているという感じ。もしも私が志方の子供だったとしたら、病の遺伝子を持っているのか持っていないのか知りたいと思うだろうか、知る勇気があるだろうか。
とにかく人間関係が二転三転というかごちゃごちゃしまくってて、登場人物はそうそう多くもないんだけど、そこに血の繋がり遺伝子の繋がりがあったりなかったりするもんで、その把握が異様に疲れました。子供達それぞれのエピソードがメインとなる連作短編集のような形で、それぞれに驚く仕掛けがほどこされているのですが、そこに到達するまでに関係の把握で疲れてさほど驚けなかったぐらい。これも文系頭のせい・・・ってことにしてもいいですかね。