三浦 明博『サーカス市場』

サーカス市場

サーカス市場

地元の人でも滅多な事では近づかないサーカス市場。そこでは、焼き肉屋の特別メニュー用に臓器売買が行われ、1杯で3日間酔い続けられる酒を飲ませるバーがあり、天秤で“裏切りの重さ”を量る質屋があり、噂が噂を呼ぶ「裏サーカス」が密かに行われているという。そんな場所に迷いこんでしまった堅気の人間が巻き込まれる不思議な物語。


雰囲気的には朱川湊人遠藤徹を足して2で割ったような物語・・・といいたいところですが、2ではなく8で割ったという感じ。ちょっと懐かし風でちょっとおどろおどろしい風。この“風”は“なんちゃって”に置き換えてもいいんだけど。帯から受けるイメージからすると、どれほど素敵な裏世界かと思いますが、至って普通。一度入ってしまったらもはや堅気の世界には戻れないとかそういうこともなく、出入りは割と容易。無理してホラーっぽいものを書かなくても・・・と思った。
連作短編集で、全編通して何人かの人物が登場しますが、人物・エピソード共に全く残らず。最も印象に残ったのが「毛鉤」でして、しかもそれがほとんど意味なくて、あなたの釣り好きはよく分かったから、素直に釣りモノ書けばいいのにと思いました。