真保 裕一『灰色の北壁』

灰色の北壁

灰色の北壁

ある山を舞台に大学山岳部のライバル同士の心の葛藤、そして因果を描いた「黒部の羆」、一人の女性を間に、二人の男がプライドを賭け未踏の氷壁に挑む「灰色の北壁」、3年前に山で死んだ息子の命日に、誰にも告げずその山へ登る初老の父親「雪の慰霊碑」の3篇収録。

雪山にかける男のロマン祭り。それほど読んでいるわけではないですが、山にまつわる物語を読むたびに、山って一種麻薬みたいなもんなんだろうなぁと思う。その魅力に全く縁のない私には、山にかける情熱も執着心も全く理解できないし、雪山の辛さも当然想像できない。だから「ホワイトアウト」のようなエンターテイメント作品でもなく、何らかの謎があるわけでもない淡々と描かれた雪山男物語を読んでも「ふーん」とか「へぇー」としか思えない。しかも、どれも女が絡んでるのですよ。命を懸けてまでも山に挑む男とそれを待つ耐える女の図、なのですよ。こういうのってやっぱり男のロマンなんだろうな。