垣根 涼介『君たちに明日はない』

君たちに明日はない

君たちに明日はない

リストラ請負会社に勤務し、日々クライアント会社のリストラ面接担当官として働く33歳の結構イケメン男が主人公。この著者としてはかなり軽妙な語り口。それでも根底に流れる車(バイク)、仕事、女、という3本柱は相変わらず。特に車なんて省いてもいい要素だと思うんだけど、どうしても入れたいんだか、つい入れてしまうんだか分かりませんが、お前の車好きはもう分かったと言いたい。リストラ請負人の主人公を軸に、面接されるリストラ予備軍との対話、その背景を描いているのですが、主人公がスマートすぎる。というかスカしすぎ。リアルに描くと重苦しくなってしまうってのは分かるけど、いくらなんでもリアリティなさすぎですよ、この男。女の趣味もちょっと偏りすぎてるし。リストラを軽く書こうというか、頑張って働いている人々への応援歌的な意図で書いたのかなぁ、悲壮感は全くないし、むしろ前向きな物語です。これまでの著作のイメージとは真逆な感じ。面白くないわけではないんだけど、私が好きな垣根涼介ではない・・・かな。こういう会社ってほんとにあるんですかね?リストラが難しいのは分かるけど、外部の人間にクビ切られるってのもキツイだろうなぁ。