磐木 大『柿崎トオルの出会った自殺請負人』

柿崎トオルの出会った自殺請負人 (ゴールデン・エレファント賞)

柿崎トオルの出会った自殺請負人 (ゴールデン・エレファント賞)

第2回ゴールデン・エレファント賞優秀賞受賞作です。
賞の大きさ、賞の特性に関わらず、基本「ナンタラ賞受賞作」に対しては“新しい作家さん(新人作家さん)との出会いの場の一つ”というスタンスなので過度の期待はしないようにしているのですが、第1回受賞作が本当に面白かったのでついつい期待しちゃった面は否めず、なのでまぁ・・・・・・・・・そんな感じです(笑)。
ネットで噂の存在である「自殺請負人」のもとを自殺志願の青年が訪ね、なんだかんだで自殺を思いとどまった青年はそのまま請負人の下で働くことになり・・・という書き出しで、当然その後は事務所を訪ねてくる自殺志願者と関わりを持つわけですが、この青年って大学を5浪してるのね。まぁ妥協することを許されない(求められない)がためにそれなりのところを受け続けてるがゆえの5浪なのでしょうが、それにしたって5浪もしてるやつが作中で「誰々よりも自分の方が頭の回転が速い」とか言っちゃうことがすこぶる違和感だった。勉強が出来る頭の良さと回転の速さからくる頭の良さは別物なんだけど、この青年からは自殺を決意した過去を持つほどの「翳」が全く感じられないんだよね。こういうキャラならとことんダメな兄ちゃんとして描き、その上で成長するってな話にしたほうがよかったんじゃないかなぁ。