水原 秀策『サウスポー・キラー』

サウスポー・キラー

サウスポー・キラー

第3回このミス大賞大賞受賞作。日本一の人気球団オリオールズで孤軍奮闘するクールな頭脳派左投手、沢村。ある日突然、見に覚えのない脅迫を受けたかと思うと、八百長疑惑という罠にはめられてしまう。犯人の目的は何なのか?自らの潔白を証明するため、沢村は孤独な戦いに挑む。


ひねりゼロ。殺人とかトリックとか一切なし。恥ずかしくなるほどど真ん中なハードボイルド小説でした。とりあえず上手いな。デビュー作だとはとても思えない。物語自体は地味なんだけど、その分登場人物がしっかりしてるので、面白く読めました。
頭が良くてシニカルでストイックで、積極的に友好的な人間関係を育もうとしない主人公。主人公の前に突然現れた謎の知的美女。当然ムフフな関係に。人付き合いが苦手なくせに、協力してくれるいい仲間には恵まれていて、危機一髪!な目にあってもぎりぎりのところでセーフ。恐ろしく定番だ。巻末の選評で「昔こういうのっていっぱいあったんだけど、今はかえって新しいかもしれない」と大森望が書いてますが、私もそう思った。ストレート過ぎてかえって新鮮な感じがしました。
プロ野球界が舞台になってますが、野球に興味がなくても分からなくても、それなりに楽しめると思います。今後、良質なエンターテイメント作品をいっぱい書いてくれそうな予感。