深町 秋生『果てしなき渇き』

果てしなき渇き

果てしなき渇き

第3回このミス大賞大賞受賞作。失踪した娘を捜す元刑事の父親。だんだんと明らかになる娘の裏側、そして心の闇。ひとりの少女をめぐって男たちは狂気への道を突き進む。


巻末で選考委員が「エルロイ」に例えているけど、警察内部の悪や警察官の心の闇を描いているという共通点ぐらいなので、ほどほどの期待で読むべきだと思います。まったく共感できるところはないし、救いもない。そして最後まで読んでも、真の主役である少女の本当の姿は見えてこない。つまり渇きは癒されない。いいタイトルをつけたな、と思った(応募時は別タイトル)。
狂気とか鬼畜とか暗黒そういうキーワードで言い表されるような小説としては、特別目新しいものもなければ深みもない。でも、狂気に満ちた物語の中で、少しだけ心を休められる瞬間というか逃げ道みたいなものを全く用意しないで最後まで押し切ったので、ドライブ感はあり。
舞台が大宮あたりなのがツボでした。やっぱり読んでいて場所が思い浮かぶと入り込め具合が違うな。