- 作者: 初野晴
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/05
- メディア: 単行本
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暴走族を率いながらも無気力な生活を送る少年、昴。昴の前に突然怪しげな男が現れ1000万で仕事をしないかと持ちかける。連れていかれた先にいたのは医学的には脳死状態ながら、月明かりの夜に限り特殊な装置を使って言葉を話すことができる少女、葉月。生きることも死ぬこともできない少女の願いは、自らの臓器を必要としている人に分け与えることだった。葉月は昴に自分と同年代の目で、臓器を提供する人間を選び、そして臓器をその手で運んで欲しいという。それが昴に与えられた仕事だったのだ。
各臓器を与えることにまつわる物語をオムニバス形式で綴った短編集のような物語。応募作の時点で、こういう形式だったようです。選評の中で内田康夫氏も書いてますが、確かにこういうパターンは面白いと思った。移植対象者かその周囲の人間がなんらかの形で昴と関係があるあたり、仮面ライダーばりに狭い範囲の物語のような気がしないでもないですが・・・。
少女の状態を想像すると、かなりグロいシチュエーション。脳死の少女が月明かりの夜だけしゃべれる、しかも各臓器を失っていってもしゃべれる、この設定を受け入れられるならば、いい話だと思う。不良少年と病弱少女(病弱どころの話じゃないわけですが)の組み合わせは、切ないロマンティック物語の定番だし。少女の願いをかなえる為に少年は必死で頑張るのに、昔の不良仲間が邪魔してきたりするお約束もバッチリです。私はダメ。そういうのだいっきらい。だからストーリーそのものは別に・・・といった感想。選評にあるほど人間の尊厳だとか命の意味だとか、そんな大層なもんだとも思えない。だけど雰囲気はいい。湿度が低めなところがいいと思った。からっとしている、というのではなくそれなりに湿っぽいんだけど、でも適度。そんな感じ。その感覚が結構合ったので、新刊に期待しちゃいます。