『KITCHEN』@シアターコクーン

始まって1週目に2階席で一度見て、今回は悩んだ末に舞台側の席で観劇。成宮寛貴(ペーター役 ドイツ人)が舞台側の通路を多用するのと、2階席ではほとんど須賀貴匡(ディミトリ役 キプロス人)と勝地涼(ハンス役 ドイツ人)が見えなかったんで、高橋洋(ポール役 ユダヤ人)を諦めて舞台側を選択。ミーハーなもんで。

以下、内容を書きまくってます。



1950年代のロンドン、そこそこ繁盛している庶民的なレストラン『チヴォリ』の厨房が舞台。様々な人種、様々な世代の人々が様々な事情や思いを抱えながらも日々働きつづけている。いつものように一日が始まるが、その日は少し空気が違っていた。ペーターとキプロス人のガストンが前日の喧嘩を引きずっていたのだ。調理場に流れる不穏な空気。そんな彼らの事情に関係なくいつものようにランチライムが始まり、厨房は戦場と化す。そして一時の休息時間。若いコックたちは夢について語り合うが、いいだしっぺのペーターは、なぜか夢を語ることができなかった。そしてペーターは不倫相手のモニックとまたもや言い合いをしてしまう。やがてディナータイムが始まるが、苛立ちが募ったペーターは、ある出来事をきっかけに怒りを爆発させてしまう。


難しい話だと思う。表面的な話の流れは理解できるんだけど、人種の違いからなる深い溝や時代背景なんかは感じようと思ったって無理な話。それでも、大きな夢を見られない若者の閉塞感、そして怒り。逃げ出したくても見えない出口、そんな社会にだんだんと追い込まれる人間、上手く言えないけれど、そういう鬱屈した感情は共感できる。「お前らは何を望むんだ?」と叫ぶマランゴに対し誰も答えないのは、自分の望みすらはっきりと分からないほど生き詰まっている・・・ということなんだろうか。亡霊のように立ち尽くす人々を見て、果てしない絶望って言葉が浮かんだので。いろいろ考えさせられる舞台でした。

最初の頃に見た時、ナリ様の声は最後までもつんだろうか・・・と心配してたんですが、楽まであと5日となっても、大丈夫でした。むしろセリフが聞き取りやすくなってた。確実に成長してるんだなぁ。一番通路に近い席だったので、後半のナリ様と杉田かおるとのラブシーンというか言い争いシーンというか、あれを真横で見まして、ナリ様の異常な華奢さに改めて驚きましたよ。それにナリ様いい匂いなの・・・。階段を上がってきてフワって横に立った瞬間「めちゃイイ匂いだわ〜〜〜〜」ってうっとり。肌も綺麗だし、歯もちっちゃい。とにかく打ちのめされました・・・。重々しいラストの余韻を引きずってなのか、カテコはみんな固めの表情で挨拶するなか、ナリ様だけは頭を上げた瞬間にニコッって笑うんだけど、それがもーカワイイのなんのって。舞台の間中ずーっとイライラしてる役で、見てるこっちまでイラついてくるぐらい険しい顔つきだったんで、あのニコッは余計強烈に素敵でした。ナリ様は舞台の道へ進んだほうがいいかもなぁ・・・。

実はナリ様よりも見たかった須賀っちは、舞台側からだとよく見えました。客席側からだとほとんど背中なんだもん。初めて舞台で須賀っちを見たのですが、思いのほかいいぞ。セリフも聞き取れたし、頭がいいからこそ諦めの気持ちも強いっ感じが顔にも出てたし態度にも出てた。それにちっこいのも目立たなかった。衣装のツナギも萌えだし、タバコも吸うし、舞台右手奥のついたての上からちょこっと顔だしたりもするし、踊るし、堪能しましたですよ。

ナリ様を追いかけて勝地も近くまで来たんだけど、あの子表情がいいんですね。別の話になりますが、イージスの行役をやるって聞いたときは、なんでこんな子が・・・と思ったのですが、イヤイヤイヤ、これがなかなか可愛くてびっくりですよ。ギターの腕は・・・だし、セリフ回しも一辺倒な感じがしましたが、それはこれからなんとでもなるっす。オトコマエチェックリストに登録ですよ。

あとは、やはり上手かった高橋洋さん。お金があったら高橋さんの真正面の席でも一回見たかった・・・。お菓子職人の役なのですが、後ろから見てても手つきと姿勢が綺麗なのです。後半始めにナリ様、須賀っち、勝地、長谷川博己さん、大石継太さん、そして高橋さんで夢を語り合う「静」のシーンがあるのですが、一人レベル違いますね。語ってる内容もあるけど、存在感が違う。コック姿もまた素敵。
長谷川さんは初めて見たのですが、一人スラっと背が高くて、ビジュアルが素敵でございました。みんなに「おいアイルランド!」って呼ばれまくる新入りの役で、新入りっても経験者採用だけど、デカイからあたふたしてるのが目立つんですよね。ああいう群像劇では身長は武器だなーと。
あと、気になったのは、マイクル役の原田琢磨くん。メタメタカワエエーーーーー!!!実は蜷川舞台ってあんまり好みじゃなかったりするんですけど、今度からはチェキらなくては。
あとあと、途中まで気がつかなかったのですが、あたしの横を何度も重い荷物を持って往復してた配達の青年役の子がTV版 ウォーターボーイズの太っちょくんでした。セリフないんだけど、丁寧に演技してましたよ。荷物がほんとに重そうだった。あれ中身空っぽだったらちょっとすごい。
すごいと言えば、じゃがいも向きの少年の子。舞台が始まる前から気がついたらそこにいてじゃがいもむいてました。この子は舞台側じゃないと見えないかも。休憩時間も合わせて3時間近くずーっとひたすらじゃがいもを向いてるんですが、どんだけ集中力あんだよ!?この子のところへじゃがいもを取りにきたりだとか、通りかかった時にだとか、登場人物たちが声をかけたり頭をなでたりするのですが、それぞれ接し方が違って、たとえばポールは「よっ」って声をかけたりだとか、ニコラスは頭をポンっとしたりだとか、この子への態度でさりげなく各人物の性格が分かるのですよ。ほとんど影になってて客席側だと見えないと思うんだけど、存在感ありました。


面白い!というわけではなかったけど、熱い舞台でした。確実にナリ様のいいキャリアになったのではないでしょうか。すっごい書いたな。ミーハーな感想だけど・・・。