神津 慶次朗『鬼に捧げる夜想曲』

鬼に捧げる夜想曲

鬼に捧げる夜想曲

第14回鮎川哲也賞受賞作。
舞台は戦後間もない昭和二十一年。九州大分沖の孤島、満月島。別名鬼角島。島一番の名家の跡取りが結婚することに。そこへやってくる跡取りの戦友であり親友の主人公(余所者)。結婚当夜、惨殺される花嫁花婿。続けて起こる殺人事件。幸薄い不思議な美少女。この家にのみ伝わる秘儀。そして十九年前の謎の失踪事件。事件に挑むは大分県警警部補と名探偵。


ここまで読んだだけで、どんな話なのか想像つくでしょう。うん、多分想像通りで間違いない。横溝+綾辻+京極。とりあえずこの3人へのリスペクトは感じる。パクリというか参考書や教科書持ち込み可で書いたレポートみたいな感じ。どうやら作者は19歳(当時)らしいのですが、本気モードで書いたのか、それとも狙って書いたのかそこらへんがイマイチはっきりしません。送った先が鮎哲賞だし、本気・・・かなぁ。
ところどころにびっくりするような文が出てきますよ。一番びっくりしたところは、それまで犯行を認めようとしなかった真犯人が探偵に詰め寄られたシーンで、「もはやこれまでか」 それは物凄い敗北宣言であった。ってとこ。物凄い敗北宣言!?なんか衝撃的な言い回し。 異様に浮いてた、その部分が。他にも結構ツッコミどころがあるので、そういうのが趣味の人には猛烈にオススメいたします。
トリックというか、殺害方法もいろんな意味ですごいです。納得できない動機だということも合わせて若いからねー(ニッコリ)って感じ。情念とか執念とか怨念とかそういうのはまだまだ書けなくて当たり前ですよ、多分。本格に触れたのが3年前だっていうし、それでこれだけのレポートを仕上げたのは素直に認めようと思いました。
ただ、19歳(若い作家)でなかったら受賞はしなかっただろうし、とりあえず若さを求めるような今の出版界の風潮みたいなもんはあまりよろしくないんじゃないかなーと言っておく。