粕谷 知世『アマゾニア』

アマゾニア

アマゾニア

完璧にジャケ買い。あと楽園か、地獄か。って帯コピーに釣られた。
16世紀のアマゾン河流域が舞台。アマゾン奥地に住む原住民、川口浩探検隊や藤原弘、探検隊に登場するような裸族みたいな人々の物語です。


精霊に守られた母なる森の中で暮らすさまざまな部族。その中に<泉の部族>と呼ばれるアマゾネス(女人族)たちがいる。部族を守るは赤い大弓を持つ赤弓。長年の宿敵<オンサの部族>を倒し、森に平和が訪れたと思った直後、大河を下り、異人=飢えたスペイン人が現れた。赤弓が先頭に立ち撃退するが、傷を負って取り残された黒髭の男を見た<泉の部族>の精霊<森の娘>は、掟を破り彼を部隊に迎え入れるよう命じる。その男は<森の娘>が人間であったころからの想い人であるという。やがてその男の存在を巡り、森の部族の平和な暮らしが綻び始める。
まず最初に宣言します。これ相当面白かったです。最初は、擬人化してるのかと思って読んでたんですよ。あれ?これって動物の物語なの・・・?とかって。赤弓の所属する女部族以外の部族が、鰐とか猿とか亀とかで、それだけならまだしもカワウソとかナマズとかさー、カピバラの部族とかまで出てくるんですもん。みんな人間だったけど。よくテレビで見る原住民の人たちの中で、下唇がビロ〜〜〜ンとかなってるひといるじゃないですか、あれは河イルカの部族らしいです。あと顔というか顎に木の棒が突き刺さってる人もいるじゃないですか。あれはナマズの部族らしいです。実際どうだか分からないけど、なるほどなーと思った。微妙なリアリティ。
そんな中で語られる物語の中にはあらゆる愛が溢れていました。森の中に生きる全ての命への愛、家族や仲間への愛、異性への愛。愛は嫉妬や悪意や恨みを生む。それでも人は愛し愛され生きて死ぬ。あらゆる命は愛し愛され大地に帰り、そして許される。うーん、壮大な物語なのです。
性別によってかなり受ける印象は違うと思う。なんたってアマゾネスの物語なので、主人公以下、あらゆる女たちが感じることや思うこと、いいこともわるいこともどこかで分かる気がするし、やっぱり闘う女の物語はスカっとする。
息することが苦しくなるぐらい濃密な空気の中で透明な水に手を入れたみたいな一瞬の清涼感、矛盾しているようだけどそんな物語です。ほんと、面白かった。
改めて口にする必要もないような当たり前のことなんだけど、やっぱり地球を大切にしようとか思った。
あと、鰐の部族長は激萌え。