タイトルの「はらわた」とは地獄から蘇った名探偵・古城倫道の従者から同僚に出世したこの作品の主人公・原田亘「通称はらわた」のことです。
タイトルが「死霊のはらわた」へのオマージュであるのは明白として、「通称はらわた」の他にも意味がある所謂ダブルミーニングなのではないかと思いながら読み進めましたが(作中で「名探偵の腸だ」という台詞はあるけど)最後まで「通称はらわた」のことでした。
ついでに言うと装丁画の金髪おかっぱ赤スカーフの銃を持った女の子は「はらわた」ではありません。地獄から蘇った殺人鬼のひとりです。
ここまででツッコミどころがありますよね?。そうです「地獄から蘇った」というところです。
この作品では若者たちが召儺の儀式を行ったことで蘇った昭和史に残る大事件を起こした殺人鬼たちに対抗すべく地獄の閻王の計らいで蘇った名探偵との戦いが描かれていて、タイトルだけでなく「地獄から蘇った」という設定もまた「死霊のはらわた」へのオマージュということなのでしょう。作中では「人鬼」と呼ばれる殺人鬼たちは体液を混ぜることで(一番簡単なのは相手を噛むことで)依り代となる身体を乗り換えられるってところもそうかな?。
とまあ設定的には間違いなくトンデモですが、(作中では呼称やディテールを改変して描写されている)阿部定事件やパラコート連続毒殺事件のアレンジや、作品の縦軸である津山三十人殺しの・・・脚色という表現でいいかなぁ?そこにあるのはガチガチのロジックで、解決したときには「なるほど納得!」以外に言葉がなかった。
それから取り扱ってる事件であり犯人が思いっきり「昭和」なので、作品全体を通して昭和の空気を感じるんだけど、そのなかでスマホを始めとする「現代」の使い方が上手い。ガールズバーの店員に入れ揚げ所持金が百何円しかない古城が見栄を張りつつ探偵事務所に帰るために「振替乗車券」を貰おうとする(そのために毒入りペットボトルを置いたと通報)とか斜め上すぎるでしょ(笑)。