白井 智之『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』

なにかの時のためにと温存してたんですが(私は白井作品でメンタルの回復を図ることができます!)、我慢できずについに表紙をめくってしまいました。

評判に違わぬ「真っ当な謎解きミステリ」であった。そして前作(名探偵のはらわた)にもましてノーグロ。
グロを求めて白井作品を読んでいる私なので、グロ無し(ないというわけではないけど白井作品比としては「無い」に等しい)であることに物足りなさを覚えてしまうわけですが、グロ無しだからこそこれほどの評価を得たということならば(グロがあっても大枠として評価はされただろうけど、多少なりとも影響はあるだろう)そこは我慢ガマン。

アメリカからとある共和国に移り住み閉鎖的な共同体を営む宗教団体で起きる連続殺人事件を描いた作品で、その特殊な環境下を「特殊設定」とする「信者」と「非信者」の『違い』が多重謎解きに繋がるゴリッゴリのミステリなんですが、斬っては捨て斬っては捨てじゃないけど怒涛のように押し寄せる「推理」の物量もさることながら、なんといってもタイトルの意味が明らかになる瞬間が素晴らしい。凄まじいまでのカタルシスに思わず泣きそうになったほど。
前作の「はらわた」(がどんな意味であったのか)の記憶がまだ残っていたもんで、まさかそこにこれほどまでにドストレートな「意味」があるとは思ってなかったし、そこにある純粋な狂気に胸が高鳴りました。

そしてなぜ日本人を探偵役にしながらこういう舞台設定なのだろうか(そこになにがしかの配慮的なものが働いているのだろうか)などと思いつつ、「はらわた」との繋がりが『名探偵のバトン』であるところに胸が熱くなったよね。

いやあ・・・これは間違いなく2022年を代表する作品ですわ。ついに白井作品が頂点に立つ日が来たのね!と喜びに打ち震えつつも次は思いっきりグロが読みたいです!。