白井 智之『ミステリー・オーバードーズ』


「食べること」をテーマにした短編集・・・ということでいいのだろうか。
みんなどれだけ行ってんの?と、むしろ異世界に行ってない人っているの?と聞きたくなるほどどこを見ても「異世界転生」だらけの昨今ですが、この作品集のなかにももれなく異世界に行ってしまう話が収録されておりまして、白井さんも流行りに乗っちゃうのかとため息付きでそう言いそうになりましたが、飛ばされた異世界というか平行世界は「口と肛門が逆」という世界でして、つまり肛門から食事をして口から排泄するという世界なんだけどタイトルが「げろがげり、げりがげろ」っていろいろと
ひど過ぎる(笑)。しかも話(謎解き)的には飛ばされた世界がそんなスカトロ世界である必要性は別にないですからね(笑)。

殺害方法こそエグイものの著名な探偵が殺される最初の1篇は動機を含め至って正統(注:白井作品比)なミステリーでしたが、あとは人肉食べてフナムシ食べてゲロって人肉食べてる印象です。スカトロが無関係だったげろがげり~に対しフナムシ食べてゲロる話はゲロることがトリックに直結してるんですが、まあ想像とかしたくないよね(笑)。

そんで最後の1篇は10年前に殺されたカリスマ探偵を偲び弟子たち(全員探偵)が集まることにしたらカリスマ探偵のクズ甥が殺されてたという始まりの事件現場の見取り図付きの館殺人事件で(そこまでガチガチではないもののクローズドサークル要素も有)、同じく弟子として集まりに呼ばれていたもののとある理由で遅参することになった貧相な探偵ではなくくっついてきたヤク中(ヤクルト中学生)の姪が、全滅した探偵たちが書き残した推理ノートのみを材料に「犯人」を絞り込むという、これまたガチの謎解きでして(最後は亜空間に逃げてったけどw)、上と下だけ本物の1万円札であとは新聞紙でつくった札束みたいな短編集だなとか思ったりしつつ、そのまっとうな2篇は共に探偵が死ぬ話であることは意図的なのだろうか。