麻生 幾『CO ケース・オフィサー』

COケース・オフィサー (上)

COケース・オフィサー (上)

COケース・オフィサー 下

COケース・オフィサー 下

<CO>とは、情報機関内で、極秘情報提供者を運営する担当官のこと。静岡県警に席を置き、権力と組織の都合に翻弄されながらもCOとして国際テロと闘う男の20年間。日本、ヨーロッパ、中東を舞台としたバイオテロリズムを防ぐことはできるのか。序盤は80年代の中東地域、情報機関へのパイプなど全くないところでの主人公の苦労話が延々と綴られる。主人公は日本赤軍ハンターで、情報を求めて各国の同業者達との繋がりを築きあげていく。その手法は体当たり。んー、このあたりが薄っぺらいというか、苦労が感じられないんだよな。単身で後ろ盾もなくこの世界(しかも中東)で頑張っているあなたに同情したから情報を流す、そんな甘いもんなのかなー。結局は人間同士の繋がり、信用するかしないかということなんだろけど、主人公にそこまでの魅力があると感じられなかったし。それに、全編を通してキーとなる謎の情報提供者(日本人であり美人)が主人公に獲得されていく過程も、そして情報を流すという行為がどれほど危険なものなのか、そこらへんも事柄として書いてあるだけという印象。ちょっと我慢して読み続け下巻に入ると舞台は現在起こりつつある事件に移る。ここから急にテンポアップ。日本で起こると思われるテロの情報を追う警察庁と警官殺しを捜査する警視庁と二つの流れが、都内に突然現れた原因不明の重症患者が発生し、どんどん増え続けるという現象を前に一気に一つになる。ホットゾーン物と化してからは一気読み。すごい臨場感だし症状の描写もリアル。前半ダラダラと書かれてた伏線もみるみる回収されていく。実際ありえることだと思うと恐ろしくなる。テロリストが計画したテロはロシアで保管されていた<新型・天然痘ウイルス>を日本に持ち込みオタク科学者の手でより強力なウイルスに組み換えさせる。そして完成したものをまず“実験場”である日本でばらまき、効果を確認した後にアメリカへ持ち込み、テロリストの本隊が自らウイルスに感染する。そして発症した段階で、すでに許可をとってあるアメリ連邦政府施設の見学にでかける。爆弾や化学兵器など必要のない「人間生物兵器」の自爆テロ。しかも必要なのはたった一人。ただ、咳やくしゃみをして歩けばいい
だけというもの。
この部分読んだ瞬間、本気で怖いと思った。やっぱり目に見えないものって怖い。ウイルスの改良なんかは実際どうなのか分からないけど、この流れそのものは防ぎようがないんじゃないかと思う。こんなの書いちゃって参考にされたりしたらどうするんだろう・・・。この手の話に関して内部事情に詳しい(と言われている)人だけに妙に現実味があるんだよな。ラストも含みがあったりするし、結局はいざこういうことが起きたとしても個人でできることって何もない。そして日本という国も信用ならないと。あー。相変わらず、時間と場面が切れ切れで視点もコロコロ変わる書き方は読みづらいんだけど、今回は場面が変わるごとに日付と場所が記されているので、これまでのものよりずっといい。ただ、誤字がすごく目立った。この出版元が出した書籍を読んだことがないと思うので、いつもこうなのかどうか分からないけど、ちょっとしっかりしてよと思った