鳴海 章『テロルの地平』

テロルの地平

テロルの地平

テロリストや政治家という云わば「社会的に大きな視点」と、派遣従業員や夫と離婚した母親という」「小さな視点」が入り乱れる物語はスピード感と読み応えがありましたが、読み終わった直後に思ったことは「こういうの飽きたな・・・」でした。もともとこういうジャンル大好きだし、この物語は面白かったんですよ!でも「飽きたな」と思ってしまった。比べるつもりではなく私が大好きな作家さん及び作品なので名前を挙げますが、福井晴敏さんの亡国のイージスを読んだ時のあの「うおおおおおおおおおおお!」というなんだか分からない興奮と危機感はもう味わえないのかなぁ・・・とか思ってしまった。どういう形であれ「テロ」とか「日本を変える」とか、そういう題材に魅力を感じなくなってしまったんですよね。で、その理由は“作品の質や内容”ではなく今の“社会”にあるんだと思う。ものすごいテロでも起きればこの腐った日本(鷲津さん@ハゲタカ)もちょっとは変わるかもしれないけどでも誤解を恐れずに言うとそんな行動に出るほどの気概が日本のどこかあるとも思えないし、さらに誤解を恐れずに言うと物語の中ですらテロという行為に“ロマン”を感じることができないのです。事実は小説より奇なりじゃないけど、今って書くほうも読むほうも大変な時代なんじゃないかなぁ・・・とか思ったり。
ジャケ買いに近いところがあったのですが、わんこが活躍する物語はそれだけで評価があがります!