香納 諒一『夜空のむこう』

夜空のむこう

夜空のむこう

タイトルあざといなー!きれいめな装丁で、モテそうな感じ。分厚いけど。新宿の片隅の編集プロダクションを舞台に繰り広げられる群像劇。小説すばるで連載?してたもののようで、繋がりがあるものの、一話完結の短編集のようですごく読みやすい。まず第一部として異なる登場人物をフィーチャーしつつ、編プロの忙しいながらも心地よい日常をさりげなく描き、第二部では事件がいくつか起こり、何故だかすこしづつすれ違いはじめ、そして第三部で夜空のむこうには明日が待っていると。そんな感じ。あーあざとい。上品すぎるよ。とかなんとかいいながら、一気読みしました。具体的な月日が書いてあるわけではないのですが、年単位の物語なので、しっかりした物語を読んだ気分だし、それぞれの心の変化に無理がなくすんなり入り込めました。なんだか心のどっかにひっかかるのは、多分私がこの作品の主な登場人物達とほぼ同年代だからかもしれない。毎日毎日それなりに文句はありつつも充実してすごしているのだけど、先を考えるともう一つ飛ぶチャンスは今しかないかも。ちょっとしたタイミングですれ違ってしまう他人との距離。一つ踏み出すことで少しだけ感じる喪失感。自分に重ね合わせるわけじゃないけど、でも少しだけ安心したような気もする。たまたま手にとった本なのですが、今このタイミングで読めたことを幸せだと思った。それにしてもストライクすぎます。特に書いてあるわけじゃないんだけど、「夜空ノムコウ」でインスピレーション湧いたんだろうなー。違ったらごめんなさいなんだけど。