倉井 眉介『怪物のきこり』

【2019年・第17回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 怪物の木こり

【2019年・第17回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 怪物の木こり

第17回「このミステリーがすごい」大賞受賞作です。

殺人が日常茶飯事のサイコパス弁護士が主人公で、主人公は突然斧を持った男に殺意を持って襲われるのですが、間一髪助かったと思ったら自分の脳に「脳チップ」が埋め込まれていることを知るところから物語は始まり、主人公が自分を襲った謎の男について調べる一方で世間では殺されて脳を奪われる連続殺人事件が起きていて、事件を捜査する警察の視点が平行して描かれます。当然両者は結びつくし、そこには過去の重大事件も関わっているわけですが、『被害者全員サイコパス』というトンデモ設定が期待したほどのトンチキ展開を見せず、主人公視点・警察視点共にまっとうな「犯人捜し」と「主人公の変化」が描かれていて、それが意外でした。よくもわるくも。

サイコパスだらけであることには理由があるのですが、そのなかで一人だけ「真正サイコパス」がいるんですよね。この人物が「怪物のきこり」という作中作(ですよね?)と絡めて物語のキーマンになるのだと当たり前に思っていたので、なんかよくわからない立ち位置のまま終わってしまったことも意外というか拍子抜け。