結城 充孝『プラ・バロック』

プラ・バロック

プラ・バロック

第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作だそうで、初めてこの作家さんの本を読みました。主人公はまたもや美人刑事ですか・・・とゲンナリしましたが、無駄にモテまくったり無駄に差別されたり無駄に襲われたり等の美人刑事につきもののあれやこれやは多少はあるけど必要と思える程度でさほどその「女」が使われることはなかったので、そこは好印象でした。常に雨が降っている薄暗い天気に港湾地帯、同時進行する二つの事件、どんどんと増える死体、サイバースペース、問題刑事に謎の男と、雰囲気や道具立ては統一感があるし、文章も余計な描写がなく硬質な感じで全体を通してまとまってるなとも感じました。結構好みかも。ただ人物造詣はあまり上手くないかなぁ。作中のクールなイメージを保つためにあえて心情描写やそれぞれが持っている過去を描写することを抑えたのかとも思えなくないんで1作だけで判断するつもりはありませんが、主人公はともかく問題刑事は後半すっかり空気になってたし、最も魅力ある謎の男・タカハシもラストの告白がまるで2時間ドラマの犯人のようなご都合展開に思えたのが残念です。
そこいらへんも含めて、次回作に期待します。