永井するみ『希望』

希望

希望

14歳で連続殺人を犯した少年が、5年経って施設から退院することになった。少年の家族、カウンセラー、事件記者、担当刑事そして殺された被害者の孫たちと加害者の少年それぞれの思いと新たに起こる事件。なんとなく、現実に起こったいくつかの事件が思い出されます。ああいう事件が起きてしまうと、やっぱり書きたくなるものなんでしょうか。結構極悪な事件が設定されているわけですが、大したことではないというかすんなり受け入れられてしまうあたり、世の中変わったよなぁと思います。で、この作品ですが、惜しいなぁという感じ。まず加害者少年がもったいない。容姿のことも含めて、途中までは何を考えているのかわかんないミステリアスですごくいいキャラなのに、ラストのあの使い方はないと思う。ガックシ。カウンセリングに来ている少女も、刑事の娘ももったいない扱い。もったいないと思った原因は、恐らく作者が力を入れて描いたであろうカウンセラーが尻軽でばかすぎると思ったから。このカウンセラー、すごく魅力的なように描かれてますけど、ちっともそんな風に思えない。ただの気まぐれで無駄に気の強い女ってだけ。冷静さに欠けすぎてる。しかも刑事も刑事で、事件の関係者と会ってすぐセックスします?普通。ばかじゃないの?んで、冷静な判断ができなくなって困ってる。刑事にも悩みがあってその内面を表現したいとしても、セックスする必要はないと思う。もっと精神的なもので充分だと思う。そういう部分を抑えて、もっと淡々と描いていたらけっこうよかったんじゃないかと思うと残念。