中山 七里『逃亡刑事』

逃亡刑事

逃亡刑事

刑事が射殺される事件が発生。その実行犯は殺された刑事の上司である組対課長で、その背後には押収した薬物の横流しという県警が大打撃を受ける汚職があった。と、書かれる作家さんによっては超骨太な作品になりそうなものですが、この作品は犯人と事件の背景にあるものはあっさり判明してしまい、射殺事件を捜査する現場責任者(班長)である女性刑事と射殺現場を目撃した少年の逃亡劇がメインでして、さらにこの主人公にあたる女性刑事は身長180センチで「県警のアマゾネス」と呼ばれるあらゆる意味での猛者というキャラクターなので、いい意味で骨太な感じはゼロ。押収品の横流しぐらいならともかくそれに気づいた部下を射殺しその捜査主任に罪をなすりつけ目撃者の子供もろとも殺してしまえだなんて荒唐無稽でしかありませんが、主人公を筆頭に半ば脅迫する形で協力させてるヤクザや逃亡先の大阪で出会った人たちなど、キャラクターの魅力で読ませてくれます。
でも主人公が母性に目覚める?ラストは好みじゃなかった。逃亡中に疑似母子のような感情・関係性が芽生えるのはいいとしても、この主人公には子供産んでもいいかなとか思ってほしくないというか、「子供」というおおきなくくりではなく「猛」という一人の人間を相手として、警察官になるまで10年待ってろというのかってところで留めてくれたほうが良かったのにな。