黒川 博行『落英』

落英

落英

黒川さんのバディものは鉄板というか職人芸というか、このジャンルの最高峰にありますよね。掛け合いだけで読み物として成立してるもん。
その上で土地転がしだったり絵画売買だったり“シノギ”に纏わる描写は詳細かつ緻密なので、実際には全く縁遠い、というかもう異世界の話のようなんだけどでも圧倒的なリアリティとして感じられて、とにかく面白いという以外にない。
今回は時効間近の射殺事件で使われたと思しき拳銃が発見され、たった3人の“専従班”が捜査にあたるという話で、これだけだとそれこそ刑事ドラマなんかにありそうな話っぽいけどそこは黒川さんなんで、軽妙で洒脱なんだけどでも泥臭い、黒川さんにしか描けない世界がここにあります。
ていうか今回は主人公のコンビの片方が残念すぎる映画オタクという設定で、初めて黒川小説の主人公に共感できる!!!と思った次第(笑)。



余談になりますが、テレ朝で現在放送中のシャワー浴びてばっかいる筋肉刑事コンビが目指すべきところって黒川小説の主人公コンビじゃないかなぁと。繰り返しますが黒川さんが描くバディものは黒川さんだからこそ描ける掛け合いであり距離感であり空気感だし、なによりもやはり関西弁(大阪弁?)だってのが最大の武器であり魅力であるのでそれをトレースというか、ドラマの舞台設定に置き換えるのは難しいとは思うんだけど、でもわたしがあの二人で刑事ドラマと聞いた瞬間「見たい」と思ったのってまさにこの作品の主人公コンビみたいなことだったんですよね。読みながらそんなことを考えたりしました。