月村 了衛『半暮刻』

児童養護施設で育った翔太は先輩の勧めで「カタラ」という会員制バーの従業員となる。女性を捕まえ言葉巧みに口説き落として風俗で働かせるまでがマニュアル化されたその店のオーナーはカリスマ性を持つ半グレであり、全ての店を合わせての売り上げ上位「トップテン」を目指すべく翔太は有名大学に通う海斗とコンビを組む。

という始まりで、正反対の生い立ちながらウマが合う二人がコンビとして「グレーゾーン」を巧みに泳ぎのし上がっていく様を描くのかと思いきや、店が摘発されたことで早々に二人の道は違ってしまい、「本編」として描かれるのはカタラ事件で唯一実刑判決を受けた翔太と事情聴取すら受けなかった海斗の「その後の人生」。
読む前に予想していた感じとは違ったものの、現実の事件を物語の中に落とし込む月村さんの脚色力は健在で、その“現実”は終わった話などではなく今もなお“現実”として在り続けるだけに怒りを覚えつつ読み始めたら一気読みでした。

正反対の人生を送った二人は最後の最後でようやく対峙するんだけど、そこまで描かれていた物語のなかにある“現実感”が強いがゆえのバランスなのか、そこでのやりとりがフワフワしてるもんで尻つぼみ感はあるけど、まさかなと思っていたタイトルの「半暮刻」がまんま「半グレ」の意味だったのには笑ってしまった。