秋吉 理香子『無人島ロワイヤル』

常連客たちが「無人島に3つ持っていくとしたら?」という定番の話題で盛り上がっていると、その店(バー)のオーナーが「無人島持ってるよ」と言い出して、じゃあほんとに「3つのアイテムをもって無人島に行こう」ということになる。島に到着し、一夜明けるとマスターの姿はなく「これからバトルロワイヤルをやってもらいます。優勝者には帰りの足(ボート)と賞金10億円あげます」というビデオメッセージが残されていた。

という始まりで、そのあとはそのまんまバトルロワイヤルに突入するんだけど、ゲームの主催者であるマスターを含め9人の登場人物のうち3人が人を殺すことに前向きどころか狂喜乱舞しちゃう狂人で笑ったw。

登場人物の関係性がサークルの仲間とか職場の同僚といった日常的に接してるものではなく「バーの常連」ってところがミソだよな。バーで「本性」を見せることはまあないわけで、オーナーを筆頭に「実はそういう人間だった」となる展開に違和感がない。
そして本を開くとまず登場人物一覧があるんだけど、最初にある名前の人物の視点で物語が始まるんですよね。そしてこの人物はとある「思い」を抱えてる。だからこの人物を中心として物語が展開するのだろうと予想するんだけど、その予想は早々に砕かれる。この掴みが見事。

あとはまあサクサクと人を殺し殺される描写が続き、そのなかで各人の「人間性」が描かれるわけなんですが、生き残るのは予想通りの人物だけどキャラクター性を最大限活かすラストバトルが痛快でした。