『大奥』「幕末編」最終話

土足で踏むのを躊躇うほどに掃き清めた大奥で、たった一人残る瀧山が御鈴廊下でこれまでの「大奥」に思いを馳せる・・・という流れで家茂、家定、家斉、家重、吉宗、綱吉、そして最初の「女将軍」家光と、過去にさかのぼって歴代将軍のハイライトシーンが流れた瞬間まさしくこの作品で描いてきた「これまでの徳川の歴史」が鮮やかによみがえり涙がこみ上げ(雨の中絶叫する黒木もいたよう!!)、最終回は60分だと知らなかったんで大奥とともに瀧山が自ら命を絶って「終わる」のだと、テーマソングのダウナーverをバックに徳川の印が、胤篤と瀧山揃いの流水紋が焼かれる様にダダ泣きしながらそう思っていたので、まさかそのあとに瀧山の「・・・イタイ・・・」なんてものがあるとは思わなかったわよ!情緒ぐっちゃぐちゃ!!。

さらにマモを通して家定の「最期」を知り救われた胤篤がそのあと物見遊山しまくってものの数年で財産食いつぶしちゃったテヘペロとか言っててズコーwだし、一方で「籠の中でしか生きてこなかったからこの先どうやって生きればいいのかわからない」と力なく呟いていた瀧山が「細々と」商売繁盛してるとか最高かよ。
この格好ってかこのシルクハットを違和感皆無で着こなせるのが古川雄大なのよおおおおお!風で飛ばされたハットの行方を乱れた髪で確認する様は永遠に見ていられる!!。

ていうか、瀧山の命を救ったのが家定の形見である懐中時計だなんて、大奥を出るとき懐中時計が止まってることに気づいた胤篤が見送りは辞退させてほしいと言った瀧山の「真意」に気づくという前フリがあったにもかかわらずまさかここで懐中時計が役にたつとは思ってなかったんで(というかその存在を忘れてた)、最後の最後で懐中時計に切っ先があたって自害をしくじるというポンコツっぷりをみせた瀧山にフフッとなりつつ、家定に生かされるとかほんとタマランわ。

タマランと言えばさあ!西郷を言い負かした宮様よ。
新政府にとって女が将軍であることがどれほど「恥ずかしい」ことなのかしらんけど、異国の大都市と肩を並べる「江戸」はその女将軍の政の元で城下の女達が築き上げ守ってきたのだと、徳川の女たちがやったこと、やってきたこと全部都合のいいように書き換えていいから江戸の町には傷ひとつつけんといて!と言う宮様には拍手喝采だし、そんでもっての「私はいつだって私です」は格好良すぎ!!。

瀧山が家定に生かされたというならば、(この慶喜の命を助けることになったことは業腹だけど)江戸の町は家茂と和宮の絆によって守られたと言っていいだろう。


国のために政を担ってきた女たちと、その背景にある赤面疱瘡という病と闘ってきた者たちの歴史が「女が統治する恥ずべき国」として書き換えられてししまい、没日録も焼かれてしまい何も残らないけれど、その時代を生きた人たちの記憶として在り続けるし、そこにある想いは次の世代に、そのまた次の世代に語り受け継がれ、そして今日があるんだよな。それを梅様という小さな少女を出すことで語らずに描く極上のラストシーンでした。


いやあ、堪能した。ストーリーも演出も、美術も音楽も、そして演技もすべてが見応えあった。
心をギュインギュイン揺さぶられながらドラマを見る時間の幸せなことといったら。ドラマ好きとして、こんなにも気合いの入ったドラマを見せてくれたことがとにかく嬉しいし誇らしい。
大好きな作品がまたひとつ増えました。この作品に携わったすべての方たちに心から感謝します。