井上 真偽『アリアドネの声』

最新のIT技術の粋を集め建設された都市機能を地下に置き健常者も障がい者も分け隔てなく生活することができる実験的スマートシティを巨大地震が襲い、当日行われていたイベントに参加していた女性が地下5階に一人取り残されてしまう。街の『象徴(アイドル)』として活動するその女性は目が見えず耳が聴こえず言葉を話すことができない障がい者であり、知事の姪。主人公は最新鋭ドローンを操縦し、女性の救出に向かう。

という物語で、民間人ながら消防と協力しドローンを使って“見えない聞こえない話せない”要救助者を地下5階から地下3階のシェルターまで誘導する主人公の奮闘が描かれるんだけど、救出活動中に様々なトラブルが発生するのは物語として当然として、トラブルのなかには「さすがに無理」となる瞬間があるんだけど、そこで要救助者がとった行動がキッカケで「実は目が見えているのでは?」疑惑が救助に携わる人たちの間に芽生えるという枝があり、一方で失声症”という障がいを抱える9歳の妹を持つ主人公の高校時代の同級生という女性が存在していて、この妹が2度も行方不明になるという枝もあって、こっちが正直邪魔だな、と感じてたんですよ。

「兄を見殺しにした」というトラウマがあって、その兄が言っていた「無理だと思ったらそこが限界」という言葉であり信念を受け継いでいるという主人公の背景であり心情を掘り下げるためのポジションとしては必要だとしても、主人公にとって「無理」という言葉がスイッチであると知ってるうえでその言葉を発するタイミングが性悪すぎて怒りを覚えたたぐらいなんだけど、でも母親の扱い含め少々綺麗すぎるものの「無理だと思ったらそこが限界」だという兄の言葉から主人公が解放されることに要救助者の考え方が影響する流れからこの二つの枝が1つになった瞬間がまあカタルシスで、そういうことなら「振動」を感じたのではないか?と力説してた主人公アホみたいじゃないかwと思はなくはないけど、でもそんなツッコミ含めて胸が熱くなった。