外山 薫『息が詰まるようなこの場所で』

帯に「Twitterで話題沸騰!窓際三等兵(かもしれない人の)初の長編小説」とあるものの、わたしはその「話題沸騰」してるという「窓際三等兵」なる人のことを全く知りません。
じゃあなぜこの作品を手に取ったのかと言えば「タワマンには3種類の人間が住んでいる。資産家とサラリーマン、そして地権者だ」という一文が目を引いたから。

私はなぜだかタワマンを舞台とする妻であり母である女たちのマウント合戦が好きでして、自分とは真逆の世界の話だからだろうと自分なりに分析していたわけなんですが、一応の礼儀だろうと窓際三等兵さんをググったら「タワマンを叩けばビューが取れた」という見出しの記事がありまして、なんだみんなタワマンドロドロ好きなんじゃん(笑)と。「タワマン文学」なるジャンルはちょっとわかんないですけども。

で、この作品はまさにタワマンに住む「3種類の人間(家庭)」を描いてて、章ごとにメガバンクで共稼ぎする妻と夫(サラリーマン)、専業主婦の妻と代々続く病院を経営する夫(資産家)とそれぞれが視点となる4篇を軸にプロローグとエピローグがついているという構成なんですが(さらに紙の書籍と電子版で異なる特典短編が付いてる)、結論から言うと求めてたものとは違った。
タワマンカーストに加えて中学受験ときたらもう妬み嫉みの祭りじゃないですか。だから私が期待したのはもっとドロドロバチバチした女たちの「表と裏」だったんだけど、なんでそっちにいくかなー・・・だった。
“こういう感じ”のタワマン文学なるものが「話題沸騰」しているということならば私の「タワマン好き」とはそもそもの話として種類が全く異なるんだな、ということを理解できたので読んで良かったです。