青本雪平『バールの正しい使い方』

はじめましての作家さんで、タイトルに惹かれて手に取りましたが、タイトルと中身のギャップ(の度合いと方向性)としては「君の膵臓を食べたい」と同じ本棚にしまいたくなるヤツでした。

父親の都合で転校を繰り返す男子小学生が主人公で、小学校中学年から高学年にかけて転校した先々の学校での出会いや出来事を描く連作スクールミステリなんですが、作品全体を通しての仕掛けがあるので読み終わった瞬間「そういうことかー」と構成を理解すると同時に胸が暖かくなりました。
主人公の「礼恩(れおん)」という名前が、転校のプロとして転校先で浮かないように「擬態」をし続ける=「カメレオン」として各章のタイトルになっているのですが、もう一人の「れおん」が「ライオン」だというくだりにはちょっと目頭が熱くなったし、エピローグがとても美しかった。

またひとりこれからが楽しみな作家さんと出会えました。お名前をしっかりインプット!。