三羽 省吾『共犯者』


岐阜県の山中で激しく損壊された遺体が発見される。大手週刊誌をとある理由で辞め現在はマニア向け週刊誌で記者をしている宮地はその事件に「匂い」を感じ取材を開始する。取材の途中で離れて暮らす弟を訪ねた宮地は弟の様子に不審感を覚えるが、その後父親から弟と事件との驚きの繋がりを聞かされることに。

読んでる最中も読み終わったあとも「三羽さんってこういう作品も描くんだな」ということが常に頭にありました。
『家族』というテーマに驚きはないんだけど、アプローチの方向性としてもっと尖っていたりいい意味でライトでポップな作家さんという印象を持っていたので、重厚と言っていいであろう今回の作品のタッチには少々戸惑いました。

血の繋がりに翻弄される兄妹がいて、兄と妹それぞれに「家族」がいて・・・という物語のなかで主人公の実家で飼われている「タロウ」という犬がめちゃめちゃいい仕事をするんですよ。
少しまえにまったくタイプの違う作品ではありますが同じように「家族」を描いた作品のなかで犬の扱いについて激怒した記憶がまだ鮮明に残っていたもんで、犬が物語のなかで「家族の一員」としてしっかり存在していること、それだけでモリモリ加点してあげたい気持ちになりました。
そうなの、犬って傷ついていることがわかるのよ。「家族」の誰かが傷ついたり苦しんでいたら心配し寄り添ってくれるんですよ。
この物語のなかにタロウというキャラクターが居ること。私はそこに三羽さんの優しさを感じます。