佐藤 究『テスカトリポカ』


おーもーしーろーかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!。

兄弟で麻薬カルテルを運営していたメキシコ人のバロミロは、敵対組織に兄弟や妻子を殺されジャカルタまで逃げ延び日本人の男と出会う。その日本人は優秀な血管心臓外科医であったがヤク中で、手術後にヤクをキメ信号無視して子供を死なせ医療界を追われ現在は臓器ブローカーを生業としていた。2人は手を組み、新たな臓器ビジネスの仕組みを立ち上げるべく日本に向かい、そしてバロミロは日本人とメキシコ人の混血で孤児である土方コシモと出会う。

あらすじとしてはこんな感じの作品で、ここ数年英米小説を読んでいないこともあって久々に触れる乾いた暴力と恐怖と狂信の世界に血沸き肉踊りまくり!。

物語の当初、三分の一ぐらいまでは複数のメキシコ人の視点で現在と過去が描かれるのですが、メキシコだけでなく日本で生きる者の視点も含まれるものの完全に英米文学、それこそジェイムズ・エルロイを読んでいるかのごとき雰囲気で進むのですが、タナカと名乗る日本人と出会い、本格的に日本に舞台を移してからは一気読み。
根幹にあるのはアステカの文明、神話、神の存在(タイトルの「テスカトリポカ」は神々のなかで最も強力な力をもつ「けむりをはくくろいかがみ」のこと)なので『理解』できるかといえば難しいところはあるものの、エンターテイメントとして日本を舞台にしたここまでゴリッゴリのノワール、それもヤクザ小説ではないノワール小説を読めるだなんて!と興奮しきりで結構な文量を文字通りの一気読みでした。

いやあ・・・凄惨だった。「商品」である児童たちの物語のなかにおける冷淡さ、扱われ方ではなく描かれ方という意味で、そこに一ミリも血が通ってない非情さがすごい。コシモが連れ出した少年さえも、儀式に必要な役目を担うという存在でしかないもの。
とにもかくにも『面白かった!』の一言です。