所謂アバンにあたるパートで不幸な交通事故が描かれて、それから15年経った現在が舞台です。主人公は15年前のあることを理由に脅迫を受け、脅迫者から逃げるべくかつて暮らした故郷へ向かうことになるのですが、そこではさらにさかのぼること30年前に母が死に、父が殺人を犯したという疑いをかけられた過去があり・・・という物語で、とにかく「不条理」の極み。
主人公には絶対に隠し通したい秘密があって、そのために父親が守ろうとした真実を知ることとなり、その真実とは姉の親友が抱え続けた重みであり、そして姉の人生であり・・・と、少しずつ明らかになっていく30年前の真相は誰かの痛みや苦しみを伴うもので、救いがないのです。
そして最後の一行。それまで隠して隠されて、暴いて暴かれて、繋ぎ繋がれてきた過去と現在の物語の最後の一行が
この世には、どんな神様もいない。
って、ダメ押しのトドメすぎる・・・・・・。
どうすんのこの読後感・・・・・・。
こんなにも単純な「トリック」で、こんなにも長い間巡り巡って多くの人の命がうしなわれる物語を紡いでしまうだなんて、道尾さんはやはり怖い作家だ。